ARUD: i-LOG

建築・都市計画研究者ノリスケの情報記録

『マチネの終わりに』平野啓一郎

このブログでは、私の研究関連分野だけでなく、

趣味で読んでいる本などからインプットしたことも

記録しておきたいと思います。

 

今週読んでいたのが、平野啓一郎さんの『マチネの終わりに』

この本、Amazon Unlimited で読み放題になってます。

 

マチネの終わりに

マチネの終わりに

 

 

天才的な才能を持ったギタリストの主人公の恋愛ストーリー。

40代のある程度人生経験を持った人たちを中心に、

仕事や人間関係、恋愛関係の中で、

自分の過去や未来をどのように考えて生きてゆくのか。

その心情の変化が、登場人物それぞれに丁寧に書かれていました。

 

「過去は変えられる」

 平野さんの小説では、フィクションでありながら、

「人間の本質」のようなものをどのようにとらえられるか?を分析し解明するような、

科学的な視点が含まれているような気がしています。

 

この小説の中で随所にでてくるの考え方が「過去は変えられる」というものです。

「過去は変わらないが、未来は変えられる」という考え方が一般的で、

その考え方が生きるためのポジティブな考え方とされがちですが、

本当にそうなのか?という疑問が投げかけられているように感じました。

 

人は、変えられるのは未来だけだと思い込んでいる。だけど、実際は、未来は常に過去を変えてるんです。変えられるとも言えるし、変わってしまうとも言える。過去は、それくらい繊細で、感じやすいものじゃないですか?(主人公、蒔野の言葉)

 

誰かとの出会いや新しい考え方に触れることで、過去のとらえ方は変わるのではないか?

「過去の受け入れ方」によって、今の生き方は大きく影響されるのではないか?

「未来は変えられる」というけれど、実は自分の力ではどうしようもない状況に巻き込まれ、それに流されるということも多くある。「自分で変えられるはずだったのに…(できなかった)」と自身を責めることは本当に良いのか?あまりにしんど過ぎるのではないか?

 

そんな考えが、この小説を読んでいると、そんな考えが浮かんできます。

小説の中では、登場人物それぞれの個人的な過ちや、イラク戦争東日本大震災など

色々なスケールの一般的にマイナスの出来事がでてきます。

それらの出来事をどのように捉え、またしばらくして捉えなおしながら生きるか?

そんな展開が楽しみな小説でした。

 

日本では少子高齢化が加速しており、若者が減っているということが、

未来が縮小し、希望が小さくなっているように言われることもありますが、

もし過去が変わると考えられるならば、

過去をたくさん持っている中年、高齢の人たちにも

大きな希望があると考えられます。

「過去を変えられる」という考え方は、

未来の発展を目指す「成長型」から

過去の蓄積を生かして精神的に充実させる「成熟社会」へ転換するための

大事な価値観のひとつなのだと考えさせられました。

 

 

 

ちなみに平野さんの他の作品で示される考え方として

「ドーン」という小説の「分人主義」があります。

この「分人」という考え方も、自分に対する考え方を大きく転換させてくれる

印象的な考え方です。

 

ドーン (講談社文庫)

ドーン (講談社文庫)

 

 ちなみに、この「分人」という考え方に関する新書も執筆されているようです。

(「ドーン」は読みましたが、こちらの新書は未読)

 

私とは何か 「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

私とは何か 「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

 

 

小説は、あくまでフィクションなのかもしれませんが、

小説家・作家の目から捉えられた社会を感じることができ、

社会学などの専門書とは違った目線から、社会を知ることができるように感じています。

そういった意味で、小説も私の大事なインプット情報ですので、

また随時、印象的な小説の情報はまとめていきたいと思います。

 

 

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